舞台「震度3」観劇レビュー

舞台「震度3」を観劇。目的の一つは丸山隆平が主演でなく出演していること。そのキャスティングにとても興味をそそられた。主演は荒川良々。大好きな俳優が主演という点はこの舞台を観たい!と思わせる最大の理由だった。そして、あめくみちこ。20年以上前、テレビで見ていた彼女が舞台で圧倒的な存在感を放つ姿に衝撃を受けたことを今でも鮮明に覚えている。舞台で俳優の新たな魅力を発見できた体験は、私が舞台鑑賞にのめり込む大きなきっかけとなった。

作・演出は赤堀雅秋。丸山の主演舞台「パラダイス」を観たことがある。特殊詐欺グループを描く作品で、当時その存在が社会問題として表面化し始めた頃の興味深い内容だったが、個人的にアウトレイジ系の暴力描写は苦手。「パラダイス」はそんな描写が多く、観劇後にやや後味悪さを覚えた記憶があった。今回の「震度3」もティザーを見る限り、同様に暴力的な描写が多い作品かもしれないと不安があった。
さらに観劇の数日前に森田豪主演の映画「ヒメアノ〜ル」を観た。この作品も社会の暗部を描く、ストーカーや連続殺人が起こる作品で、後味悪さは、ここ何十年も味わったことがない程、私にはとてもしんどい作品だった。その嫌な余韻が残ったまま迎えた舞台「震度3」。
同様の暗い雰囲気を纏ったポスターやコピーに、苦手な描写の匂いがすると不安感が強くなった。しかし全然違っていた。タイトル「震度3」が表す通り、小さな揺れ=不安を巧みに演出に組み込み、「何かが起こりそう」が物語の軸になっていく。しかし鮮明になっていく「何も起こらない」ことが妙に面白く、現実世界で抱える不安も、大したことないと思えて、気持ちが和らぐ不思議な作品だった。自分たちは底辺だと捻くれる主人公たちの会話やエピソードが、時にコミカルに描かれ観客を楽しませる。彼らの心の暗部は何にも解決されないまま、ただいつもの日々が続いていく。その様子を見ているうちに、不思議と安堵と温もりが生まれる奇妙な作品だった。

私は観たい作品を選ぶ時、キャストと同じく、創り手のこれまでの作品を参考にする。しかし今回実感したのが、過去作品や、世間の評判は関係なく、実際に観ないといい作品に出会えないと改めて強く感じた。本当に観に行けて良かった。
そして過激な描写に頼ることなく、何かが起きそうで、起きない、人々の心の揺れを描く脚本と、それを舞台化する演出力。少し卑屈で決して幸せそうでない普通の人たちを演じる俳優たちの姿に圧倒され、ここ数年の中でも心に残る名作舞台だった。

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