安田章大「忘れてもらえないの歌」感想

演劇・ライブレビュー

舞台が好きだけど、今までジャニーズが出ているという理由から、所属タレントが出ている舞台を観てもないのにケチをつけていた私が、観て良かったと思うジャニーズ主演舞台について語ります。

「忘れてもらえないの歌」観ようと思った理由

やっぱり観に行きたいと、チケット売買フリマサイトを覗き始め、半ば諦めていた“定価で譲っていただける”という方とうまく取引できた。しかも1階の良席だ。

なぜそこまで観たいと思った理由は、

・安田章大が出演している。
・大好評だった「俺節」と同じ福原充則による脚本・演出

この2点が最大の関心ごと。関ジャニ∞のファンでない人からはあまり認知されていないだろう安田章大の底知れぬ才能をやっぱり生の舞台で確認せずにはいられない。

そして、演劇好きを豪語しながら全くノーマークだった福原充則の舞台を観ておきたかった。という理由からだ。

福原充則は話題のドラマ「あなたの番です」の脚本を担当し、その名が知れ渡った脚本家。でも彼は歴とした舞台人で、演劇での実績は前述の「俺節」をはじめ、多くの作品を発表している。その中で私が一番気になったのは「ニッポンの河川『大地をつかむ両足と物語』」。この作品は完全外でやる野外演劇だという。普通よりは少し多くの舞台を観てきた私が過去の作品をふり返り、ストーリーは忘れているけど、強く印象に残る作品といえば野外演劇がほとんど。それは観劇に適さない(作品によっては)過酷な状況で、観るというより体験する演劇だからではないかと思う。作る側はもっと過酷であろう、天候にもかなり左右されるリスクが高い野外演劇を実践する福原は、ホンモノ感がハンパないと、演劇が好きだと豪語しながら知識の浅い私は福原充則を今さら知ったことに不甲斐ない思いがした。と、余談が長くなったが、そんな彼が脚本・演出の舞台にあの安田章大。もう喜びと大いなる期待しかない。そんな舞台を観るのは久しぶりだった。

簡単にあらすじ

戦中から戦後にかけて生きていくために音楽の道を選んだ若者たちの物語。戦争の暗い影が色濃くなる中で、音楽好きが集まるジャズバーがある。歌やダンスを楽しむ男女が集う社交場が厳しく取り締まられはじめる。何度か特高警察が店に突入するたびに、常連客や店員はてんでばらばらに逃げまわる。そして戦況は益々悪化。そんなある日、ジャズバーの常連客であった滝野と、良仲が店に訪れる。ジャズ好きの良仲はレコードを戦火から守るため。滝野は店に残るお酒で食っていくため。それぞれ守るものが違う2人。再び戦後の焼け野原の中再会し、「進駐軍相手に金を稼ごう」と滝野が中心になり集まった他のメンバーと共に、ジャズバンドを結成。戦後の苦しい時代を生きていくために、志向が違うメンバーが集まり始まったジャズバンド。評判もよくうまく動き出したその活動に、見えはじめる陰り。そして舞台となるジャズバーは、オーナーを替えながらも、音楽好きが集まる場所として生かされていくが・・・

感想(ややネタバレあり。)

物語は新聞記者が、主人公である滝野(安田章大)を取材している、というていで話しが進行する。バンドが向かう運命や、バンドのために奔走する滝野。空回りしながらも、いつも明るく振舞い続ける滝野は、その理由を「空襲で焦土と化す焼け野原で心が空っぽな人間を見たから。どうせ空っぽなら絶望でなく希望をつめたい」という。そんな滝野の姿や、それでも離れていく仲間を見て、作り手は本意ではないと思うが、どこか関ジャニ∞の現実とシンクロしてしまった。希望も見え隠れしながらも、人生はそんなにうまく行かない現実を突きつけられているような、それでも笑っている滝野を見て切なくなる。作・演出である福原は「戦中・戦後を描こうと思った。でも暗い芝居にはしたくない、タフさと明るさ、そして人の痛みがわかったうえでの華やかさを持った人いるだろうか・・・そんな時に安田の顔が浮かんだ」という。正に安田はハマり役。相変わらず彼の歌声は伸びやかで可愛げがあって心に響く、久しぶりの(ジャニーズでなく)舞台人としての逸材だと改めて感服した。

チケットは既に完売。でもチャンスあり

今回のチケットは全公演完売。私は高額転売する人に恩恵を与えたくないが基本。しかし意外にも各チケット売買フリマで定価、いやいや定価以下でも出品されている。今回の公演は2階席であっても、関ジャニ∞ファンでなくても、舞台って難しくて苦手と思っている人でも、観て欲しいオススメの舞台。これは安田好きの感情も相まってかもしれないが3時間半もあったの??と思える飢餓感も残る。

舞台はちょっとしたハプニングが起きたり、逆に完璧すぎるキャストの一体感など観るたびに違うから、チャンスがあればもう一回観たい。ちなみに私が観た公演はハプニングもなく、おそらくテンションも一定で無難な回だった。それでも感じた熱量に、絶対に大跳ねする回があるんだと、機会があれば何度となく観たい舞台だ。

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